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③「どちらかが彼女を殺した」のつづき 加賀恭一郎編【ネタバレ】

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③「どちらかが彼女を殺した」加賀恭一郎編

2日目(187) 12月?日(火曜日) 後編

加賀は、園子のマンションに向かった(137)。周辺住民に話を聞きに行った。

園子の部屋の真上の住民と話が出来た(315)。
住民はホステスで、仕事を終えて戻ってきた午前1時過ぎ、園子の部屋の窓に明かりが付いているのをみた、ということだった。遅い時間に明かりがついていたことは珍しいので、覚えていたらしい。
園子のタイマーは1時にセットされていた。康正の証言(p48)により、園子の部屋の電気は切れていた。園子が自殺であった場合でも、康正が部屋に入る前に誰かが侵入したことを示していた。



続いて、園子の部屋の2つ隣の住人の女性に会うことが出来た。
彼女は先週の火曜日の昼間に園子が外出するのを目撃していた。美容師の仕事が休みでよく覚えていたということだった。その時の園子の姿は、ジーンズにジャンパー、口元を隠すようにマフラーを締め、サングラスを掛けていた(138)。顔を晒したくない場所に向かった可能性があるが、どこに向かったかはわからなかった。

次に、加賀は園子の部屋の隣214号室(217)を訪れた。住んでいたのは、フリーの物書きをしている女性だった(214)。
園子とは特に親しくもなく、会って立ち話をたまにする程度の付き合いということだった。
加賀は園子が自殺したことを話し、動機について心当たりがないか訊いた。彼女は知らない様子だった。
「最近、お話ししたのはいつでしたか」加賀は訊いた。
「先週の水曜日に、話しました。その時は和泉さん用事があってきたんです」
「どんな用事で」加賀は促した。
「8ミリビデオカメラを貸して欲しいということでした。披露宴で使うからって」
「あなたがビデオカメラを持っていることを和泉さんは知っていたのですね」
「ええ、あたしの職業のことも話してたので、彼女はあたしの仕事に興味をもってたみたいで、取材用にビデオカメラを使ったりするということも話していました」
「それで、カメラをお貸しになったわけですね」
「いいえ。土曜日に貸す予定だったのですけど、前日の金曜日に必要なくなったといわれました」
加賀は頷き、手帳にメモをした。物を貸し借りする仲の関係であれば、もう少し何か聞き出せると考え訊いた。
「園子さんとは、他にどんな会話をされていましたか?」
「ほんとたいしたこと、話してないんです」
「何でも結構です。例えば、そうですね。和泉さんが大切にしてたものありませんでしたか」
「そういえば写真を大切にされていました。いつも見たいからってメモ帳に挟んでみえました」
「どんな写真だったか、ご存知ですか?」
「ええ。猫の写真でした(219)。あたしも園子さんも猫が大好きだったんです(14)。写真といっても油絵を撮った物で、部屋に飾ってある物を撮ったそうです。2枚あるっていっていました」
「他にはどんなことをお話しになりました」
女性はあやふやな話を続けた。



「ありがとうございます」礼をいうと、加賀は話題を変えてみた。「金曜の夜のことなんですが、お隣で何か気になったことはありませんでしたか」
「この前の金曜日はあたし仕事をしていたんです。すると、お隣から男の人と、女の人の話し声が聞こえました。12時前だったと思います。壁が薄いのでよく聞こえるんです。もしかしたら隣からじゃなかったかもしれませんが」
「テレビの音ということはありませんか」
「テレビだと分かります。響き方が全く違うので。チャイムの音も聞こえましたし」
「何時頃」
「チャイムが鳴ったのは10時半頃だと思います」
なるほど、加賀は頷くと手帳に記入するため手を動かした。
「あの~」女性は申し訳なさそうな顔を加賀に向けた。「和泉さんが亡くなったのは金曜日の夜なんですよね」
「はい。そうですが、どうかされましたか?」加賀はメモする手を止めた。
「あたし土曜日の昼間も部屋にいたんですが、和泉さんの部屋から誰かが出入りする音がしたんです。チャイムの音も聞こえたし(221)」
「それは不思議ですね」
加賀は何か分かったら伝えます、と礼をいって廊下にでた。

(211)他の住人にも話を聞くことができた。康正がドアチェーン越しに大声で妹を呼んだ声が聞こえたか確認したが、どの住人も聞いていないという返事だった。



マンションの外に出て、時計を確認すると午後5時だった。丁度、下校の時間なのだろう、小学生たちが歩いていた。加賀は道路に目をやり、困った顔をしながら、何かを探す素振りをした。子供たちが通り過ぎるとき、長身の体を子供たちの目の高さになるように屈んだ。笑顔で声を掛けた。
「こんにちは」
小学生たちは大きな声で挨拶を返してきた。
「おじさん、昨日ここに車止めてて、落し物したんだけど、君たち気が付かなかったかな?」
子供たちは顔を見合わせて、相談しだした。
「あの車だろ?おぼえてるよ。うちの車とおんなじだったし。色はちがってたけど」
一人の小学生が話していた。車種名と色を訊くと康正の車と一致した(211)。
「そうそう、その車。君たちいつもこの時間に歩いてるの?」
「そうだよー」元気に返事した。
「どうも見つからないみたいだなぁ」加賀は頭を掻くしぐさをした。
「おじさん、おまわりさんにきくといいよ」
「おう、そうするよ。ありがとう」
加賀は小学生たちに笑顔で礼をいった。小学生たちはバイバイといいながら歩き出した。

小学生と別れると、コンビニエンスストアに寄った(54)。
加賀が身分を明かすと、店長が応対することになった。
「昨日のこの時間のお客さんについてお聞きしたいのですが」
「ちょうど私もカウンターで応対していましたが、この時間はお客様が多いので、どういったことですか?」
「こちらの方が買い物をしたと思うのですが、覚えていませんか?」
加賀は康正の写真を見せながら訊いた。
えーと、店長は首をかしげながら写真を見た。
「おそらく、飲食料以外を買ったと思いますが」加賀は補足した。
「ああ」店長は何か思い出したようだった。「この人だったかはっきりとわかりませんが、この時間のお客様は飲食を買う方がほとんどだったので、そういう方がいた印象はあります」
「パトカーが来るまでの時間だと思うのですが、ビデオを見せてもらえますか?」
加賀はビデオで、康正を確認した。買ったものも判明した。使い捨てカメラが2つ、薄手の手袋、ビニール袋のパック(54)。
園子の部屋で康正を見たとき、彼はそんなものを持っていなかった。康正が警察の到着前に何かをしたのは確実だと加賀は思った。



コンビニエンスストアを出ると、レンタルビデオ屋を訪れた。
昨日、園子の持物を調べていた時、会員証があるのを見つけていた。さらに領収書を確認すると火曜日にレンタルビデオ屋を利用した形跡があった。
店員に訊くと、園子が借りた物を教えてくれた。それは古いアダルトビデオ(351)だった。そのビデオの主演女優について尋ねると、その女優が出演しているのはその一本だけだろうということだった。そのビデオを借りた。
加賀はマンションの美容師が話していたことを思い返していた。園子が顔を隠していった目的地は、ここだったのだろう。
園子は他にもレンタルビデオ屋の会員証を持っていたので、一応他の店舗も当たったが空振りだった。

加賀は署に戻ると、ビデオを詳しく見た。
園子と主演女優に関係あると感じた彼は、女優の顔をプリントアウトした。
そして、ビデオが撮影された頃の園子の交友関係を調べることにした。その時期はちょうど園子の大学時代にあたった。

(139)
園子の手帳にあった『計画美術』に電話した。
いろいろなデザインを請け負う事務所だった。従業員は経営者兼デザイナーのフジワライサオ。アルバイトの美大生オガタヒロシの2人。その2人で今は経営していた。念のため、以前勤めていた人物がいないか訊いた。フジワラと同じ大学の後輩(20)が、卒業してから3年間アルバイトをして、今年の4月に親が経営する大手出版社に就職したとのことだった。彼の名前はツクダジュンイチ。3人に園子のことを訪ねたが、誰も知らないということだった。
どうして、誰も知り合いのいない会社の電話番号が手帳に書かれていたのか。彼らの返事は園子との繋がりがないことを示していた。加賀は念のため、名前だけはしっかりと覚えておくことにした。



園子の行政解剖の結果が出ていた。それによると不振な点は見つからなかった(142)らしい。医師の報告(143)によると、胃袋の中にはほとんど食べ物は残ってらず、絶食というほどではないにしろ、ろくに食事をとっていなかったのではないか、ということだった。これは自殺者によく見られる特徴だった。血中アルコール濃度は、さほどの量ではなかった。
感電死の際に受けた以外の外傷(144)はなく、内臓にも異常はみられなかった。
園子は睡眠薬を飲んでおり、寝室のテーブルに残っていたワイングラスに残っていたワインからも睡眠薬が検出されていた。

加賀は電話をした。相手は園子の睡眠薬を処方した医師だった(p176)。
睡眠薬の服用量を訊いた。1回1包、多いと思う場合は半分でもいいということだった。医師は特に眠れない理由を知っている感じでもなかった。
現場のテーブルには、睡眠薬の包みが2つあった。その意味を考えた。
その包みには、園子の指紋が同じようについていた(78)。

加賀は遺体の状態の報告書を取り上げた。胸のコードを止めていた絆創膏が少しはがれ、導線が胸にくっついていなかったとある。
自殺して、そんなことがありえるだろうか?園子が死亡してから何らかの力が加わったと考えるのが自然だろう(145)。
絆創膏が保管されていた場所を確認すると、本棚の高い位置(P147)の救急箱の中にあり、そこからは園子以外の指紋は検出されていなかった。絆創膏の他に留めるものが無かったのかみると、粘着力がありそうなセロテープやガムテープが低い位置にあることがわかった。
取りにくい位置の絆創膏をどうして使用したのだろう。そこには意味があると加賀は考えた。


④ につづく

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