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⑤「どちらかが彼女を殺した」のつづき 加賀恭一郎編【ネタバレ】

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目次

⑤「どちらかが彼女を殺した」加賀恭一郎編

12月?日土曜日(241)

加賀は高円寺にある弓場のマンションが見える場所にいた。男が弓場の部屋に入っていくのを確認した。それから2時間、男が出てきた(258)。男の後を尾行すると、中目黒のマンションに入っていった。管理人に男のことを訊くと、出版社に勤める佃潤一と教えてくれた。ツクダジュンイチといえば、計画美術でアルバイトしていた人物。現在の就職先が出版社ということから考えて、同一人物で間違いない。園子と計画美術が繋がった。
弓場佳世子と佃潤一が深い仲なのは間違いなかった。この2人が今回の園子の死に関係しているのも間違いないだろう。関係しているのが一人であれば、康正はすでに復讐を果たしているはず、彼は未だ決定的な証拠を掴んでいないと考えた。
加賀は管理人に佃が車を所有しているか訊いた。持っていないということだった。少しマンションを見せて欲しいとお願いした。
管理人はセキュリティが掛かった扉を開けてくれた。エントランスから、共用廊下を歩いた。エレベーターの他に、階段は2箇所あり、直接外部にでられるようになっていた。しかし、非常時に出ることはできるが、入ることはできないタイプのものだった。周りを確認すると、カメラが設置してあった。防犯用と思われた。
加賀はエントランスに戻ると、管理人に訊いた。
「階段から外へ出る場合、簡単にでることはできますか」
「ええ、非常時用なんで、そういった時にはすぐ出られるようになってます。ただ開閉した際には、管理人室にわかるようになってます」
「すると、普段利用する人はいないんですね」
「はい」管理人は頷いた。「入居されている方には、契約時に伝えてありますので利用する人はいません」
「なるほど、するとこのマンションを出入りするにはこのエントランスを通らないといけないわけですね」
「そうなります」
「エントランスの防犯ビデオの映像見せてもらえますか」加賀はお願いした。
園子が殺された金曜深夜からの映像を見た。映像はやや上から見下ろす感じになっている。
年末の金曜の夜だったせいか、何人かの住人が帰ってくる姿が写っていた。ほとんどの人間が酔っぱらっている。そんな中、出掛ける人間も数人は確認できた。みんな防寒着をしっかり着込んでいた。白いコートにフードを被った女性も映っていた。加賀はカメラを避けて通りすぎる人物がいないか確認した。
ゆっくり検証する時間がないと感じた加賀はビデオを借りて、再び外に出ると、マンションが見える位置で様子を伺った。



ドアが乱暴に閉められる音が響いた。その少し後、エントランスから康正が現れた。
加賀は、康正の後を追い、渋谷から山手線に乗った(256)。同じ車両に乗り込みドアのそばに立つと、康正の姿を見ていた。視線を感じたのか、康正はこちらを見た。池袋で康正が降りたので、後を追った。
「いつからつけてたんだ」(257)

康正とやきとり屋に入った。(259)
佃にはアリバイがあることを康正から聞いた(266)。
加賀は復讐をしないよう康正を説得し、彼を信じると伝えた。

署に帰ると、加賀は佃のマンションから借りた防犯ビデオを何度も見た。
園子が死亡した日、9時過ぎに胡蝶蘭(159)を抱え帰ってくる佃の姿が映っていた。そして最初見ただけでは気がつかったが、よく見ると佃と思える人物が、10時頃と深夜の午前1時前にカメラを避けるように通る姿が映っていた。康正から聞いた佃のアリバイは崩れた。

犯人は、弓場と佃のどちらかで間違いないだろう。あとは彼らの証言が必要だ。
加賀はモニターの電源を切った。

12月?日(日曜日)

園子のマンションまであと少しという時だった。1台のタクシーがマンションの前で止まった(292)。扉が開くと、佃が勢いよく飛び出し、階段を上がって行った。
その姿を見た加賀は、今、園子の部屋で何が起こっているかを想像した。佃が駆けつけた様子からして、部屋の中に弓場もいるだろう。康正は最後の追及を始めた状態でかなりの興奮状態のはずだ。ここで邪魔をするのは彼を刺激することになる。
加賀は、時間を見計らって電話を掛けた(300)。

加賀は康正の指示に従い、園子の部屋に入った。目前の状況を一瞬にして理解した(303)
寝室の奥で、ベッドにもたれかかるような格好で眠っている弓場佳世子の様子を見て、康正に確認した。彼女の手足はガムテープで固定されている(292)。彼の指示に従い、弓場は自分で薬袋を破って飲んだらしい(303)。
佃潤一は、ダイニングテーブルの椅子に座っていた。弓場と同じように手足をガムテープで固定されていた。
二人の体からはそれぞれコードが伸び、それは康正が持つスイッチを通してコンセントに繋がっていた。加賀は康正を信じていたが、最悪の状況だと理解した。

緊迫した状況が続いた。弓場が目を覚ましてからは、園子の部屋の空気はいっそう張り詰めていった。加賀はその部屋で交わされる言葉を注意深く聞いた。
そして、ついに犯人を特定した。犯人はあいつだ。間違いない。加賀は確信した。

加賀は、次にすることを理解していた。
最善の状況は犯人にも康正が危害を加えないことだが、無実の人間を危険に晒すことは間違ってもあってはならない。
加賀はある物を探した。寝室にいる弓場の近くにはそれはなさそうだった。そう遠くない所にバラの模様の入った綺麗なゴミ箱(290)があるのを見つけた。それを康正に気がつかれないよう近くに引き寄せ、中を見ると目的の物が見つかった。加賀は康正の目を盗みそれを取り上げ、コートのポケットに入れた。
これで、康正を導くことが出来ると心の中で安堵した。



康正は証言を得る度に真実が分からなくなっている様子だった。康正の呻きが聞こえる(342)。
犯人は、佃の犯行を引き継いだ弓場佳世子なのか。
それとも佳世子によって中止された犯行を、改めて佃が実行したのか。
あるいは自殺か。
康正は迷っていた。彼は犯人を特定できてはいない。犯人を間違えてスイッチを入れた場合、それは悲惨なことになるだろう。加賀は説得した。
(343)「和泉さん。この審判は、我々に任せていただけませんか。今この場では、ここまでが限界だ」
「君たちに任せて、何がどうなるというんだ。結局答えを出せず、自殺だったということになるのがオチじゃないのか」
「それはならない。誓ってもいい」加賀は必死だった。
「さあ、それはどうかね。君たちの上司は、はじめから自殺で処理したい考えだったからな。とにかく俺は、この場で決着をつける」
「和泉さん…」
「もう話しかけないでくれ」
加賀は黙った。康正が間違いを起こさないと信じて、同時に、真犯人を彼自身の手で見つけ出させてやりたいとも考えていた。
「破壊には必ずメッセージがある。それはどんな事件でもいえることです」
利き手の話をしていた時の加賀自身の言葉を思い出していた。彼は気づくだろうか。

少しの時間が経過した後、康正の目がさまよいだした。
加賀は康正が気づいたことを悟った。康正はゴミ箱の中身を確認したがった。加賀は中身がないことを示した。
康正は真犯人が佃潤一と弓場佳世子のどちらかであるか気づいた様子だった。
真犯人を見つけたことで満足して欲しいと考えたが、それだけでは満足してくれないようだった。どうしても復讐を止めたかった加賀は、園子がどうして殺されなければいけなかったかを話した。園子の知らない面を聞いた康正は、動揺した。
しかし、康正は止まらなかった。
犯人の体に繋がったスイッチをついにONにした。

加賀は康正に飛びかかっていた。止めることは出来なかった。
しかし、犯人は死ななかった。スイッチには電源が繋がっていなかった。
加賀は安堵し、康正に頭を下げ礼をいった(354)。

園子のマンションの前に再びパトカーが並んだ。
弓場と佃が刑事に連れて行かれた。


⑥ につづく

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