オススメ度★★★★★(読みやすい、コンシェルジュの問題解決も面白い)
累計265万部突破 「マスカレード」シリーズ最新作
若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた一通の密告状。
犯人は、コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す!? あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再び――。出典:amazon
マスカレード・ホテル、マスカレード・イブに続くマスカレードシリーズ第3作。
前2作共とても面白かったので、期待して読みました。(感想あげてません)
本筋は、「若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた一通の密告状。」女性を殺した犯人は誰か?なぜ密告者は犯人を知っているのか?その密告者は誰か?
犯人を捕らえるため、年越しカウントダウンイベントマスカレード・ナイトに現れるという犯人を捕まえるため、捜査一課のチームが12月28日から潜入捜査を開始する。
ホテルに訪れる仮面を付けたお客様達。
コンシェルジュの山岸尚美に降りかかるのは、そのお客様からの無理難題。この問題をどうやって解決していくのか、それもこのシリーズの楽しみです。
東野圭吾さんなので、犯人は序盤に登場しているはずと注意して読んでいく。
気になる人が見事にハマって、気になってたことがやっぱり、となるとうれしい。
登場人物多すぎな気もしますが、大きなホテル、組織だとしょうがないかもですね。
被害者の苗字が「和泉」で殺害方法が胸と背に貼り付けたコード。『どちらかが彼女を殺した』の被害者 和泉園子の自殺(他殺)の方法と同じで、もしかして自殺?と最初思ってしまいました。
後から忍び込んだ人が、自殺の証拠をなくしたという『どちらかが彼女を殺した』の展開と逆で。
全く違っていてよかった。
曽野なんかも園子から来ているのかな。
ここからネタバレです
東野さんらしく、伏線がいろいろあるし、気がついていないこともあるだろうなと読み終わって思う。
前2作のことも面白かったとしかなくて、内容をほとんど忘れている。新田浩介と山岸尚美が活躍したなという漠然としたことしか覚えていない。
とりあえず 登場人物がたくさんなので、どれだけ登場したかリストアップしてみます。
ホテルコルテシア東京 15人
・山岸尚美(コンシェルジュ)
・吉岡和孝(若手フロントクラーク)
・藤木(総支配人)
・田倉(宿泊部長)
・久我(フロントオフィスマネージャー)
・氏原祐作(フロントオフィスアシスタントマネージャー)
・江上(宴会部宴会支配人)
・大木(フレンチレストランオーナー)
・浜島(エグゼクティブハウスキーパー)
・杉下(ベルキャプテン)
・土屋麻穂(宿泊部若手フロントクラーク コンシェルジュ・デスク3人のうちの1人)
・金子(料理長・調理課長)
・林田(チョコレート細工)
・藤沢(中国料理、副調理課長)
・香坂太一(北米支部担当局人事第2部長)
お客様 18人
パ:「マスカレード・ナイト」チケット入手者
・秋山久美子(1536) 難題:窓から見える東京タワーを見えるようにしたまま、顔のポスターだけ見えないようにして欲しい
・ジョージ・ホワイト 難題:和紙の活用
・日下部篤哉(1801)ロイヤルスイート カード決済 難題:プロポーズのセッティング、宿泊客(仲根緑)と接点をつくる
(↑香坂太一の偽りの姿 叔父の名を語った)
・狩野妙子 難題:日下部のプロポーズを不快な思いをさせずに断る
・イタリア人カップル 難題:鮒ずしとくさやを食べさせてくれる所
・パ関西弁男女 大阪 タキシード、ウェディングドレス 難題:誰かが彼女のバッグを開けたらしい 難題:チャペルでウエディングドレス姿の撮影がしたい
・パ仲根伸一郎 愛知県で既に死去
・パ仲根(マキムラ)緑(1701)コーナースイート カード決済 伸一郎の妻(恋人) 難題:バースデイケーキの模型
(↑森沢光留の偽りの姿:神経科クリニック経営)
・浦辺幹夫(0806)スタンダードツイン(本名:内山幹夫) 現金払い ペンギン 群馬県前橋市アパート201(実際は東京都練馬区在住) 和泉春菜と不倫 和泉のお腹の子は内山の?進学塾経営 春菜との関係を公にされたくないため犯人に協力
・曽野昌明(1008)デラックスツイン カード決済 貝塚由里と不倫 中小企業診断士の資格
・曽野万智子(旧姓:木村)昌明の妻 犯人を脅迫 警察へ密告 貝塚由里を犯人に殺害させるため犯人に協力 貝塚由里と友人(高校から)
・曽野英太 昌明と万智子の子 和泉春菜の部屋を覗き見
・パ*2貝塚由里(1206)デラックスダブル カード決済 曽根昌明の不倫相手 曽野万智子と友人(高校から) 犯人を脅迫 警察へ密告 六本木の小さな店の経営者(お金に困っていた)
・山下和之 インターネット決済 バットマン キャットウーマンとペア
・木乃伊男(キノヨシオ)(0905)現金払い
警察 9人
・稲垣警部
・新田浩介(潜入:フロントクラーク)
・本宮
・矢口警部
・乃瀬(矢口の部下)
・尾崎(管理官)
・関根(潜入:ベルボーイ)
・渡部(ベテラン)
・上島(ネット犯罪)
被害者と関係者 8人
・和泉春菜(28歳)
東京都練馬区 ネオルーム練馬604(地元は山形) 12月7日に死体発見(コードを胸と背に当てられ感電死)
トリマー 妊娠4週目
中学2年の頃からボーイッシュに(母の男に悪戯されたかも)
母は山形で有名な和菓子屋の一人娘 小学生の頃離婚 店の番頭と一緒になる
クローゼットに少女趣味の服装(ゴスロリ、ガーリー、ロリータ)
進学は不要、上京は必要(とにかく家を出たかった)
・早川 和泉の高校時代の友人 新田と同じ大学の医学部
・室瀬亜実(26歳)
岐阜出身 税理士事務所勤務 絵本作家志望 3年半前に和泉春菜と同じ方法で殺害された。
クローゼットの中にロリータ趣味のものが何着か
パンツルック、化粧薄め、髪は短い
・野上陽太(27歳)
室瀬が通う画材店勤務。画家志望。室瀬との交際期間は約2ヶ月。肉体関係にあったと思われる。
室瀬がどこに住んでいたのか知らない。
・笠木美緒
元マネキン工場勤務、現イチゴ栽培農家手伝い
男性恐怖症、女性限定の公演会場で女装した森沢光留と知り合い、恐怖症を治すと説得された。
1ヶ月後、森沢を自分の部屋に招いた時、独特の匂いを感じ、それを察した森沢が男だと明かす。笠木に震えが出なかった。
男性恐怖症はレイプが原因の可能性(新田の考え)
森沢の言葉に救われた気がした。森沢を神様だと思う。
行動を細かく管理された。
部屋で会う時、森沢は女装、笠木はロリータ服を着させられた。洗脳された。
付き合った男性に救われる。結婚の予定。
・灰色のセーターの男
笠木美緒の付き合っている相手
・森沢光留
男性、女性を超越した存在。
10歳の時、母親(医師)が離婚。中学生になり姉妹ごっこをする。
18歳、母が事故でなくなる。東京で妹と暮らす。
・森沢世羅
森沢の双子の妹 21歳で自殺。
自殺の前にレイプされていた。
ロリータ服が好きだった。
登場人物について
書き出してみましたが、本当にたくさん登場してますね。アンパンマンやダースベイダー仮装した人もいれたら大変な人数。
メインの人達がいるので、その人達だけ覚えていればいいけど、ホテル従業員の多さからも大きなホテルだと実感させられます。
警察の方も組織的に担当があり、それぞれの役割が別れていてリアリティがある気がします。
犯人探し
犯人探しはひとつのテーマです。
密告者が誰なのかというのも、ポイントですね。
東野圭吾さんの作品なので、チョイ役の人物が犯人の訳はないし、終盤にようやく登場だとは考えにくい。
どうやってうまく犯人を隠して(読者を欺いて)いるのかも楽しい所です。
ホテルにやってくるお客様達。嘘のベールに包まれた人達をどうやって見抜くか楽しみました。
仲根(マキムラ)緑がチェックインした様子。長身でハスキーで艶っぽい声という描写にもしかして男?って思いクレジットカード提出で違うかと。最後にやっぱり男だったときた時は、ちょっとびっくりしましたが、偽造できると語られて、そうなんだと思うしかないですね。
チェックインで嘘の名前の可能性の判断に、現金で払うか、カードのプリントもしくはインターネット決済が出てきます。
現金で払った場合は、名前が嘘の可能性が高い。
警察が何重にもチェックをしているので、本当の名前を語ると犯人だとバレる可能性があると感じさせられ、現金払いの嘘の名前を語った人物が犯人ではないかと、注意して読むのですが、現金払いは、浦辺幹夫と木乃伊男のみ。
ミイラ男は当然として、浦辺の行動は怪しすぎて、犯人らしくない。
見事に犯人を上手く隠して、密告者もまさか2人組だったのは驚きの展開でした。
伏線
2度目をしっかり読めばいろいろと気がつくことがあるだろうけど、さっと目を通して
・新田が登場の時ダンスを踊る → 森沢光留扮したマイケル・ジャクソンとアルゼンチン・タンゴを踊る
・新田 中学生までロサンゼルスp14 → 尚美 コルテシアロサンゼルスのフロントオフィスに抜擢p160
・新田の新しい20万のオメガの時計p16 → 尚美の祖母の形見の古い4分遅れの時計p386
・密告者が望遠鏡で和泉春菜の部屋を覗いていた可能性 → 曽野昌明が野鳥展に興味を示す → 父が超望遠カメラを所有(曽野英太が和泉春菜の部屋を覗く)
・新田が尚美と再開「匂いが違う」p47 → 笠木美緒がマキムラミドリを部屋に招いた時感じた「匂いの違和感」p429 (これは伏線とはいえないかも)
さりげなく書かれたヒントや繋がり。
気がつくとうれしいです。
時計についての尚美の語りp223
・時計は安物でも狂わない → 約束の時間に遅れる人が増えた(説)
・正確な時間わかる → ギリギリまで時間を自分のために使う → 遅刻
対策
・信頼の置けない時計を持たせる → 遅れているかもしれないと思い、常に余裕を持って行動しなければいけなくなる
・時計に頼りすぎてはいけない = 自分の感覚だけを頼りにするのは危険
・時間と同様、心の距離感にも余裕が必要
時計が狂っていたおかげで助かった山岸尚美。
狂っていてもおかしくない理由をしっかり語っておくのは、さすが東野さんです。
気になるところ
・関西弁の夫婦は無事チャペルで写真をとれたのだろうか。殺害未遂現場になってしまったので無理だろうけど。
・和泉春菜の子供は内山幹夫の子供だったのだろうか。
・10歳を過ぎたミニチュアダックスを飼っていた内山。もしかしたら子供がいなかったのかも。和泉が妊娠を喜んでいたと知った時の、内山の無言の反応が気になる。
・香坂太一が日下部篤哉としてチェックインした時、カード決済だった。香坂は叔父さんのカードをどうして持っているのか。叔父さんは何をしている人なんだろう。実際はカードのプリントに使っただけで、支払ったわけではないけど。
・香坂太一の宿泊代や、サービスした料金はやっぱり経費なのかな。
『どちらかが彼女を殺した』との関係
東野圭吾さんの加賀恭一郎が登場する人気シリーズの中のひとつ「どちらかが彼女を殺した」。この作品と共通点がいくつかあります。
強引かもですが。
・殺害された人物の苗字が同じ 和泉春菜と和泉園子
・殺害方法が同じ 睡眠薬を飲ませ胸と背にコードを貼り付けてタイマーで殺害
・画家志望の恋人 野上陽太と佃潤一
・友達の彼氏を奪う 貝塚由里と弓場佳代子
犯行
今回の犯行は1人の犯人だけでなく、密告者も絡んできて複雑なものになりました。
わかりにくかったので、なんとなく流れ。
曽野英太
曽野英太が女性(和泉春菜)の部屋を超望遠カメラで覗く
8月半ば 部屋に男(森沢光留)が訪れる シャッターを切る 何をしていたのかは分からない
曽野英太がマンションに忍び込む 部屋が604号室と知る
10月半ば 曽野英太が近所のコインパーキングで2人を目撃 スマホで2人を撮影
車の助手席に「礼信会」の封筒を目撃
女性(和泉春菜)の姿勢が変わらない。戸惑っているところで母に見つかる
母に言われ、匿名で通報できる方法を探る 匿名通報ダイヤルを知る
曽野英太がパソコンを使い通報
事件発覚
犯人捕まらない → 母に男のことを話す
「礼信会」を調べる → 男はモリサワ・クリニックの院長
貝塚由里
曽野万智子から相談 事件の犯人と思われる身元を知っている
男に金銭を要求しないか 2人でやろう
12月15日 貝塚由里が森沢に非通知で電話
クリニック宛に和泉春菜の部屋に森沢がいる写真を送る
12月17日 クリニックに電話 → 森沢が携帯番号を教える 携帯に掛け直し1億円を要求
森沢 正体を教えるよう要求
マスカレード・ナイトでの森沢への提案
お互いに仮装して参加。森沢はお金を入れた鍵の掛かったバッグをホテルのどこかに隠す。
由里が森沢に電話し、指示を出して森沢を確認し、由里と万智子の仮装を教える。
森沢から鍵を受け取り、由里はバッグの場所へ。万智子は森沢と会場に残る。
現金を確認したら会場に戻り、カウントダウンの後仮面を取り、由里と万智子が森沢に免許証を見せる。
提案の裏
警察に密告状を出し、会場に刑事を張り込ませる。お金を確認したら警察に犯人の仮装を連絡。
万智子に合図を送り、逃走させる。警察が犯人を取り押さえる。
二人の身元は犯人にわからない。
12月31日午後 2人でチェックインしパーティー券2枚確保
夕食時、曽野一家に偶然を装って合流。万智子をパーティーに誘う。
刑事が張り込んでいるか知るため、警察に連絡
パーティーが始まってしばらく経ってから森沢に連絡
ペンギンが右手を上げる 万智子と由里の格好を伝え理解したペンギンが左手を上げる
(応答が遅かった)
森沢にバッグの鍵を渡すよう要求 鍵なしで4階チャペルにあるという返答
誰かに襲われる
曽野万智子
由里に相談 森沢に口止め料を要求すると由里がいう
英太にYに電話をさせ、由里と昌明の不倫が確実となる
由里に家庭の秘密を捕まれたことになり不安になる
由里 森沢と連絡を取る (森沢に身元を知られると殺される)
万智子 森沢に連絡 取引相手の共犯者と明かす
取引は罠 警察に逮捕させる予定
森沢に由里の殺害を依頼
森沢 由里が現金入りのバッグを回収した時に殺害することを提案
森沢光留
森沢の犯行と内山の動きは本書で
動機:警察への復讐
妹をレイプした犯人を見つけることができず、妹に屈辱的な行為を何度もさせた警察。
自殺に追い込んだ警察の信用を失墜させることが目的だった。
(警察が張り込んだホテルで殺人事件を起こす)
感電死にした理由:
醜い死体にしたくない
和泉春菜、室瀬亜実を殺した動機(新田談):
不幸な形で妹(世羅)を失い、男でありながら男を否定するようになった。女性に変身して心のバランスを保とうとしたが、できず。妹の代わりを求めた。
洗脳したはずの妹の代役が、男に心を許してしまう。許せない気持ちは、愛情を憎悪に変えた。
神聖な思い(森沢)
次回作も期待
ホテルマンの嘘も認めることと、刑事の人の嘘を暴こうとすることがうまく絡まっているのが、このシリーズの魅力だと思います。
次回はロサンゼルスが舞台になるのか、尚美が日本に帰ってからが舞台になるのか。
さらに匂いが変わった尚美と、新田が登場することを期待したい。
尚美の問題解決能力が、偶然にも犯人の完全犯罪を成立させたりするのも面白そう。
どんな話になるのかな。
(次回作の予定はあるのか知りません)
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