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『私が彼を殺した』のつづき② 雪笹香織の章

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その2 雪笹香織の章

あたし達の前で駿河は動かなかった。
いつ仕掛けたかわからなかったけど、そうか、あの時に交換ができたのか、ピルケースを持っていれば可能だったのだ。あたしの思惑通り、駿河は動いてくれた。役立たずと思っていたのが申し訳ない。でも、あたしが穂高誠を殺したのだ。あたしの誘導で駿河は動いたからだ。体の中からこみ上げてくる気持ちを表現したい衝動を必死に我慢した。

「加賀さん」声がした方を向くと美和子がいた。
あたしは、犯人がわかってよかったね、と声を掛けたい気持ちだったが止めた。美和子は続けて訊いた。
「教えていただけますか。ピルケースには誰の指紋がついていたのですか」
「その必要がありますか」加賀は少しためらった感じだった。
「ええ、あたしは全てに納得したいのです」
今さら、美和子は何に納得できないというのか。真剣な眼をして加賀を見る美和子を見て思った。想像では、そこには4人の指紋がついているはずだった。

「分かりました」加賀は再び黒っぽいスーツ(P352)から手帳を取り出して読み上げた。「ピルケースに付いていた指紋は、穂高誠、ホテルのボーイ、駿河直之、穂高誠の元妻」
穂高の妻の名前は明かされていない。美和子にとって知る必要がないという判断だろう。あたしも美和子には話していない。
「加賀さん、あなたの推理から考えても付いてて当然の人たちね。納得できた、美和ちゃん」
あたしは美和子に同意を求めるように訊いた。
美和子は加賀の手帳を見詰めていた。「そして」美和子が促した。
「そして」加賀が続けた。あたしは戸惑った。「雪笹香織、西口絵里、神林美和子、浪岡準子」




「どういうことだ!」駿河が怒鳴った。「俺が交換したというなら、どうして雪笹や、西口たちの指紋も出てくるんだ、加賀さんよ」勢いよく駿河は立ち上がった。
駿河の顔は真っ赤だった。痩せこけた頬にながれる血の音が聞こえそうなくらいに。駿河が加賀につかみかかった。加賀はその大きな体で駿河を抑え付けた。駿河は最初抵抗していたが、無駄だと思ったのか動きを止めた。
「どういうこと」あたしも加賀に訊いた。

「どうやら最後のピース(証拠)はこれではなかったみたいですね」
ピルケースの写真を見ながら加賀は言った。淡々と言う神経がよくわからない。加賀の推理は間違っていたのか。駿河はやっぱり交換していないのか。でも、穂高は死んだ。それも硝酸ストリキニーネを飲んで。
「みなさんのお話しを聞いて、カプセルを仕込む機会は駿河さんにしかなかったと思いまして、指紋のことについては、その点については本当に謝らなければなりません。駿河さん本当に申し訳ありません」
加賀は駿河から手を放し、駿河の方へ向くと、深々と頭を下げた。加賀が頭を起こそうとした瞬間、駿河は思いっきり加賀を殴った。加賀は防御できなかったのか、大きくバランスを崩し壁にぶつかり、倒れ、頭を打ちつけた。
加賀は気を失ったのか、動かなくなっていた。着ているスーツの上着は大きく乱れていた。床に手帳が落ちているのがわかった。

部屋は静まり返った。全員が何かを考えている。空気がとても重く感じた。
どうやら、穂高誠殺しは振り出しに戻ったみたいだった。

「駿河さんには、無理だったみたいね」あたしは言った。駿河は頷いていた。「そうするとやっぱり神林さん」
神林貴弘はどこをみているのか、焦点の合っていない目は、空間を見つめているようだ。

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