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『私が彼を殺した』のつづき⑤ 雪笹香織の章

私が彼を殺した 東野圭吾

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その5 雪笹香織の章

駿河直之がブツブツ言っている。

駿河は結局、ピルケースを用意しながら薬を仕込めなかったのだ。
この根性なしが、あたしは声に出したい衝動を抑えた。
それにしても指紋の量に驚いた。あんなに小さなものに。あれだけの指紋がついてて、それが識別できるなんて。

あたしの前には美和子がいた。情けない顔をした兄がその後ろにいた。
兄の体を支えながら、彼女は彼をゆっくりと座らせた。その時、バランスを崩して美和子は床に手を付いた。ゆっくりと立ち上がると、彼女はあたしを見て言った。
「雪笹さんちょっといいですか」美和子が2階に行こうと促した。
駿河直之と美和子の兄、そして、まだ気を失っているらしい加賀刑事を残して、美和子とあたしは2階へ続く階段を上がった。前を歩く美和子は、胸元に手を押し当てている様子だった。何を考えているのだろう。

美和子は書斎の扉を開け、中に入った。あたしはそれに続いた。
「雪笹さん正直に話してください。雪笹さんですね」
美和子が何を言いたいのか、あたしにはもちろん分かった。




美和子の結婚式の前日、駿河直之と浪岡準子のマンションを後にして、自分の部屋でカプセルを眺めながら考えていた。その時、不安が急にこみ上げてきた。指紋を拭き忘れた所があった。急いであたしは浪岡準子の部屋に戻った。中に入る必要はないはずだった。指紋を拭き取った所は、インターホンのボタンだった(P101)。すぐに帰ろうと階段に足を掛けた時、再びあたしの体は浪岡準子の部屋に向かって反転した。
一度自分の部屋に戻って考えていた時、ひとつの案が浮かんでいた。あたしは扉を開け、瓶の中からもう1錠カプセルを取り出していた。

結婚式の当日の朝、あたしはホテルの美和子の部屋の前にいた。中には誰もいないようだった。
あたしの下着にはカプセルが1錠入っていた。いつチャンスが巡ってくるかわからない。
しかし、自分では実行しない。駿河直之がやってくれるはず。彼が失敗した時の保険として身につけることにした。

結婚式の日、あたしは西口絵里(P380)とずっと行動することにした。特にカプセルと薬瓶には絶対近寄らないことをあたしは決めていた。二人でラウンジに向かった(P129)。美和子と合流して、美容室に行く途中。(P130)美和子が薬を取りに戻ると言ってホテルの部屋に一人急いで行った。あたしは彼女の後姿を見詰めた。

再び、美容室で合流して控え室に向かった。その時、美和子は美容室にバッグを忘れた。なるべく薬に触れる機会を持ちたくないあたしは、西口絵里にバッグを取りに向かわせた。
美和子の準備を眺めながら控え室であたしは過ごした。準備がほぼ終わろうかというとき、神林貴弘と西口絵里が一緒に並んで入ってきた(P133)。西口絵里はバッグを部屋の隅に置いた。そこには美和子の普段着などがあった。
それから、美和子はバッグから薬瓶を取り出し、ピルケースへカプセルを1つ入れて、あたしに渡した。美和子の顔の表情に変化はなかった。受け取ったピルケースをあたしはすぐに西口絵里に渡した(P164)。それから、駿河、ボーイと渡り、穂高誠の手に渡った。

駿河直之も神林貴弘もどうやら薬を仕込めなかったみたいだ。
でも、穂高が死んだということは、
穂高誠は私が殺した。
そうとしか考えられない。

 

その6 神林美和子の章-1

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