オススメ度★★★★(犯罪、掏摸の世界がちょっとのぞける)
中村文則さんの「教団X」はちょっとダメでしたが、「私の消滅」はとてもハマりました。何度も読み返して、謎、意味を探るのがとても面白かったです。
「掏摸」は「私の消滅」ほどではなかったですが、「教団X」よりはよかったです。
東京を仕事場にする天才スリ師。
ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」
—-運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。
そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは……。その男、悪を超えた悪—-絶対悪VS天才スリ師の戦いが、いま、始まる!!
(amazon.co.jpより)
ネタバレ注意
天才スリ師の男。
犯罪も、その行為を隠すためには組織化が必要。仲間ができることは仕事の効率はあがるが、犯罪故の危険も増す。自分がいくら注意していても仲間が危険を連れてくる。
1日で20万くらいを簡単に手に入れることができるというのだから、ひとりでも生きていけたはず。
組織犯罪に巻き込まれ、結局殺されることになる男。
男は常に見張られているが、見張っている側の描写がないので、文章の特性を活かしたことだからしょうがないけど、モヤモヤする。
常に周りの状況に気を配るスリ師を見張るのは相当難しいことだと思うし。
見張りが、どうやって気が付かれずに男をつけていたのか知りたかった。
物語は、木崎に刺され意識が朦朧とする中、絶命する前に近くを通り過ぎる女性に向けて500円硬貨を投げるところで終わる。
この後、女性がお金が転がった音に気付き、男を見つけなんとか救出されたと思いたい。
そして、組織から離れたところで自分の生き方を続けていってくれれば。
と思うが、やっていることは掏摸。犯罪。死ぬのは可哀想だと思うが、掏摸はやめてほしい。
実際は、もし助かったとしても木崎は男が死んでいないことを見張りから報告を受け、男はより深い犯罪のための駒になってしまうのだと思う。
操られる人生から男はもう抜け出せない。
それを断ち切るには自分で命を断つしかないのか。
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