(はじめに)
暗黒女子のような叙述トリックを活かした小説は、多くの謎を残したまま終わりを迎えます。
参加している読書メーターや、アマゾンのレビューには、予想通りだったという感想が、結構あります。
私も最初はそう感じた一人です。ふーん。そうなんだ。なんとなく想像したとおり。で読み終わりました。
改めて感想を書こうとし、どうせなら嘘をはっきりさせたいなと再読すると、そこまで単純だったとも思えなくなりました。謎が解明されないというのは、もやもやが残りすっきりしません。
暗黒女子で残された大きな謎。
それは、いつみの妊娠を密告したのは誰か、そしてその証拠となった、白石氏が所有していたエコー写真のコピーと北条との逢瀬の写真はいつ手に入れたものか、ということ。
いつみも誰が仕組んだのか、想像をしていますが、最後まで読んだところで、それはわかりません。
ここから考えていくと、朗読会で物語が終わるのはもったいない。
そのあとが気になります。
このブログに書かれているのは、私が謎の真相を勝手に想像した暗黒女子のそのあとです。
なるべく世界観を壊していないつもりですが、秋吉さんで完結していると感じた人は読まない方がいいかも知れません。
一気に書き上げたので、読み返す度、修正されるかもしれません。ご了承ください。
つっこみコメントも大歓迎です。
ここからは暗黒女子のつづきを書いています。
未読の方は、ネタバレになるので注意してください。
(はじまり)① ある文学サークルメンバーの朝
最悪の1日を終え、眠りについたのはいつだっただろうか。自分の気持ちとは裏腹に窓に掛かったカーテンの隙間から、清々しい光が差し込んでくるのを感じる。
重いまぶたを開ける努力をするが、これから降りかかるであろう苦難を思うと、夢の中に留まっていたい気持ちが強くなり、再び眠りにつこうとした。
ピロリン。スマホが着信を告げる。現実に戻されたくない。気持ちに反するように睡魔は全く襲ってこない。スマホのランプが明滅し、現実に引き戻そうとしている。
まだ高校生なのに、これからの人生に全く夢がなくなってしまった。小百合の計画性は誰もが充分理解している。いつみよりも恐ろしい支配が待っているに違いなかった。
暗い気持ちを振り払うことはできないまま、スマホを手に取った。着信メールは一通。
「件名:ごきげんよう」から始まっていた。
読み終わると、黒い気持ちがどんどん広がっていった。夢の中に留まろうとはもう思わない。私は小百合に対して最強の弱みを手に入れていることに気がついた。
差出人を確認すると、メールアドレスには見覚えがないが署名には「ユダ」と記されていた。
小百合にメールしてやった。気分がいい。今頃震え上がっていることだろう。
メールにはこう書かれていた。
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件名:ごきげんよう
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昨日は定例会 お疲れ様でした。
朗読会とても素晴らしい作品ばかりでしたが、最後の会長の「閉会のごあいさつ」はしっかりときかれましたでしょうか。
「白石いつみさんの作品」で衝撃を受け、充分に理解できていないのではないかと思います。
偶然にも今回の朗読会を記録していましたので、音声データを送ります。
どうぞ、大切にしてください。
こちらのメールアドレスは送信専用のものになり、返信しても私には届きません。
あなたもこのようなメールアドレスが欲しければ、添付の「メールアドレスの作り方」ファイルを参考にしていただければ幸いです。
ユダ
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音声データをスマホで聞くと、「小百合のごあいさつ」が全て入っていた。昨日は気が付かなかったが、小百合は自分でいつみを殺したことを告白している。馬鹿すぎる。笑いがこみ上げてきた。自分から弱みをさらけ出すなんて。
「メールアドレスの作り方」を利用して、簡単に使い捨てアドレスから小百合にメールできた。
ユダとは誰なのか?パソコンが得意でクラッキングまでできる古賀園子と考えて間違いないだろう。
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つづく
暗黒女子のつづき 2.澄川小百合の朝 (2/6)
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