この記事は秋吉理香子さん著 暗黒女子のつづきを書いています。
ネタバレです。注意してください。
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② 澄川小百合の朝
「第61回 聖母女子高等学院文学サークル 定例闇鍋朗読会」は嵐の中での開催となり、クライマックスに向け、激しさを増す天候は、神様も私に味方をし、演出に協力してくれているとしか思えなかった。さすがの私でも天候を操ることはできない。
5人のしもべを手に入れた。これからは私が主役。何をさせようか想像しているといつの間にか寝てしまっていた。
朝。いつもより気持ちよく目覚めた。これからのことを考えるとワクワクした気持ちが湧き上がってくる。カーテンを開けると昨夜の荒れた天気がウソのように、澄みわたった空が広がっていた。
なんだか私の未来を暗示しているようで嬉しくなる。
ウキウキした気持ちを家族に気付かれないように、冷静なふりをしながら朝の準備をしていると、スマホがメールの着信を告げた。着信があったからといって、私は急いで確認するようなことはしない。特にこれからは私は人を操る立場になる人間。着信に踊らされるようであれば、そんな人間になれはしない。
ピロリン!またスマホが着信を告げた。続けて?ちょっと気になるが、強気で見ないことに決め込んだ。そんな私に対抗するように、それから何度もスマホは着信音を奏でた。
さすがに家族も私に「スマホ鳴ってるよ」と言ってきた。
私はクールにスマホを手にして画面を見てちょっとびっくり。着信メールが何十件もあった。
差出人は書かれていない。よくわからないところからのメール。普段は開封することもしないが、件名に気になるものがあり、開いてみた。
文字を目で追う。徐々に気分が悪くなり、血の気が引くのがわかる。7月だというのに寒気に体が支配され、体が硬直していく。私はスマホを落とし、倒れた。
スマホ画面には、開かれたメールが映し出されていた。
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件名:主役のあなたへ贈り物
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昨日は定例会 お疲れ様でした。
朗読会とても素晴らしい作品ばかりでした。特にあなたの最後のあいさつにはみなさん言葉を失っていましたね。
デザートにも手を付けられず、とてももったいないことをしてしまいました。せっかく用意してくださったのに、口に出来ず申し訳ありませんでした。
そのお詫びの印に、ささやかなプレゼントを差し上げたいとこのメールを送らさせていただきました。
気に入っていただけたら幸いです。
あいさつには素晴らしいメッセージが込められていましたね。
私も大切にさせていただきます。
今度お会いするときが楽しみです。
かしこ
添付データ:会長最後のあいさつ録音
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倒れたのに驚いた家族が私の元へ駆け寄ってくるのがわかった。
必死にスマホを手にした。
「なんでもない。大丈夫」
よろけそうになるのを必死でごまかしながら立ち上がった。
なんとか部屋に戻り、ベッドで横になった。
気分はすっかり落ち込んでしまった。メールを読んですぐに自分の大きなミスに気がついた。いつみを殺したことをあの時に告白してしまった。舞い上がりすぎた。5人がすでに自分の奴隷のような錯覚に陥り、余計なことまでべらべらしゃべってしまったことを悔いた。枕に顔をうずめ、思いの限り悔しさを吐き出した。
少し冷静さを取り戻し、頭を切り替えることにした。まずは録音データを聞く。しっかりといつみを殺したと告白している。これでは5人に比べても罪の重さは私が一番重いではないか。5人が脅迫してきたら、私に勝ち目はないかもしれない。
このメールを送ってきた人物を特定できれば、打開策が見つかるかもしれない。改めてメールを確認するが、やっぱり差出人はわからない。他にも大量に送られてきたメールを確認してみると、どれも同じ音声データが添付されていた。ただメッセージの内容は全く違っていたり、ほぼ同じだったり。どうやら送り主はひとりではないらしい。
1人から送られてきていれば、クラッキングもできるという古賀園子が一番怪しいが、メールはメンバーの5人以外からも送られてきてる感じもする。もうみんなが私がいつみを殺したことを知っているのではないかと思えてくる。
初等部の頃、からかわれていた私を救ってくれたのはいつみだった。北条先生が言ったように私たちは太陽と月の関係だったのかもしれない。自ら太陽を消した私はもう輝くことができない月。この窮地をすくってくれるいつみはもういない。いざとなればいつみが父に頼んで5人を退学に追い込むことも出来たかもしれないけど、私にはそんな力はない。いつみの力を痛感した。
メンバーを追い込む策を考える。私の罪の大きさ以上の秘密を掴めばいい、それだけのこと。
それから部屋にこもり頭を回転させるが何も浮かばなかった。
私は諦めた。
私は高校を退学する決心をした。
家族に大反対され、不登校になった。
5人の奴隷になるよりはマシ。
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つづく
暗黒女子のつづき 3.暗黒◯◯ 3/6
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