この記事は秋吉理香子さん著 暗黒女子のつづきを書いています。
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④ わたしの独白 その1
寒い地方にある田舎の出身である私には、姉と弟がひとりずついます。
私は恋愛に困ることはありませんでした。なぜか告白されることが多く、そのほとんどを受け入れました。同時に何人もの相手と付き合う術を自然と身につけていました。
本が大好きで、小説家を目指したこともありました。小説を書くのにはパソコンを使用していました。ネットに投稿したり、ネタを探したり、気がつけばパソコンやネットのことにもかなり詳しくなりました。そして、大学を卒業すると教師になっていました。
「聖母女子高等学院」で国語を担当し、文学サークルの顧問も受け持っていました。
女の園である女子校。生徒達は限られた世界で育ち、ウブで何も知らず、自分の体を持て余した意見だけ立派な子供たち。身近な男性である私に、いい寄ってくる子の数は記憶に定かではありません。
当然、全て受け入れました。関係のある生徒達には、私とのことは絶対に話さないように口止めしました。
今の世の中、生徒との交際は進退に関わります。そのことを伝えるとみんな黙っていてくれました。その中に学院の経営者白石氏の娘、いつみがいました。
ただ、いつみは他の生徒とは違い、私を独占しようとしました。私に近づくために文学サークルを復活させたのには驚かされました。父親に頼み込み豪華なサロンまでつくらせたのです。
徐々に文学サークルには人が増えていき、その中には私と関係があるものもいました。古賀園子です。私は園子にパソコン操作を教えてやりました。園子も詳しいが、私の足元にも及びません。
園子が1年生の時でした。白石氏のパソコンに近づくことができると聞いた私は、それとなくクラッキングの方法を教えてやりました。
「パスワードを忘れてもこのUSBを差して起動すれば、解析してくれるんだよ」
彼女はそれを大事そうに持って帰りました。
後日、私のパソコンから白石氏のパソコンが操作できるようになっていました。園子がUSBを差した証拠です。USBを差し込むと遠隔操作ができるソフトが自動インストールされる仕組みになっていたのです。
園子は白石氏のパソコンからさらに学院のホストコンピューターへ入り込み自分の成績や評定値を書き換えていたようです。
いつみが1年生の春休み。ブルガリアへ2週間いつみのホームスティで行くこととなりました。私は国際研修や学校見学で忙しく飛び回る合間をぬって、いつみとの逢瀬を楽しみました。
この時知り合った世話係のエマ。彼女からも私は言い寄られました。なぜなのかは分かりませんが、私にはそれだけの魅力があるのでしょう。
帰国後もエマからEメールが届き、文面での交際が続きました。たわいもない内容を交わしていたのですが、毎回、愛しているかと聞かれ、君だけだよと都度返していました。すると、ある日突然。いつみとの写真が送られてきました。
知っているなら最初から言ってくれればいいのにと、面倒くさいと思いながらメールでなんとかごまかしました。いつ撮ったのかは分かりませんが、出回ることは避けなければいけない写真です。
私はどんな女性とも写真を撮らないよう気をつけていたはずなのに。外国で注意力が欠如していたのかもしれません。多くの人と交際する度に思うのですが、言い訳は面倒です。写真は大きな証拠になります。スマホが当たり前の昨今、厄介な時代になりました。
いつみが2年生の春休み。再びブルガリアへ。今回は高岡も同行するためいつみと公の場で会うのは極力避け、会うのは私のホテルにしました。
合間を縫ってエマとの逢瀬も楽しみました。彼女の家に行った際、PCにウィルスを感染させておきました。時限タイプのもので、私が帰国してからウィルスが活動を始め、徐々にデータを壊していくものです。接続したスマホなどの機器にも伝染し、エマの家のデータは全て使い物にならなくなったと思います。当然、いつみとの写真も消えたはずです。
留学生として、エマが来ることになり戸惑いましたが、エディナに代わったことを知り、胸をなでおろしました。
高校生教師としての人生は順調でした。多くの生徒から愛されています。授業中、私はチョークで黒板をコンコンと2回叩く癖があります。「それはきみのことを考えている合図だからね」と関係のある生徒に伝えておきました。生徒はきっと体温を少し上げて私を見ていたことでしょう。
私自身、教え方が上手いとは全く思いませんでしたが、私が受け持つクラスの国語の成績は、生徒たち自らの力でいい結果を出していました。おかげで保護者からの評判もよく、学校からの評価も高くなりました。
いつみが3年生の5月。いつものように駐車場で待ち合わせをして車で会いました。
私はいつみから妊娠の報告を受けました。
ほとんどの生徒は体の関係を望んでも深い関係にはなりませんでした。キリスト教で婚前交渉はいけないことだと考えられているからです。しかし、いつみは違っていました。本能のままに私を欲してきました。私もそれに応えました。
結婚については、中絶を禁止しているキリスト教の考えのもとであれば当たり前のことです。
理由は関係ありません。神に望まれて誕生した命。歓迎しなければならないと、その時は思いました。
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つづく
暗黒女子のつづき⑤ わたしの独白 その2 5/6
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