この記事は秋吉理香子さん著 暗黒女子のつづきを書いています。
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⑤ わたしの独白 その2
いつみの妊娠については8月まで内緒にすることになり、私たちは会うことを避けることにしました。連絡はEメールのみです。
実際の私は、いつみとの関係に少し疲れていました。他の生徒達は、私の事情を理解し程よい距離で私が望んだ時に応えてくれます。しかし、いつみは違います。当たり前のように彼女が望んだ時に私を呼びつけ、快楽を得ようとしました。
Eメールだけの関係になって、改めて気付かされました。いつみは私の自由になる存在ではない。私を束縛する存在でしかない。と
いつみと別れたい。
いつみに直接言ったところで、絶対に別れてくれるはずもありません。
私は行動に移すことにしました。
しかし、私の考えは甘すぎました。まさか高校教師の職を失う羽目になってしまうとは。
いつみは自身の小説で
ブルガリアでの写真を手に入れたのは、高岡かディアナか両方
父に密告できたのは、二谷か古賀か両方
妊娠に気付いたのは、小南かディアナか両方
エコー写真を手に入れたのは、古賀か手帳を拾った小南か両方
と書いていましたが、その全部に該当する私だということをすっかり忘れていたみたいです。
おそらく文学サークルのメンバーも私だと気づいていないでしょう。
私は白石氏に匿名の封書を送りました。
いつみから送られてきた子供のエコー写真をコピーしたものをそこに入れました。それだけでやめておけば、いつみの中絶だけで終わったはずでした。
私はいつみとの別れを決定的にするため、以前ブルガリアのエマから送られてきたいつみとの写真も同封しました。これがいけなかった。
私は白石氏の逆鱗に触れ、退職することになってしまったのです。
その後、私はある地方に移り住みました。
いつみが自殺したと噂が届き驚きましたが、数日後いつみから連絡があり更に驚きました。
私は、いつみからは逃れられないのかも知れない。と観念しました。
高校教師をクビになり、何もない私のところへやってきたいつみは、今の私と同じように何もないただの17歳の女子でした。
改めていつみを見ると、高校にいた頃とは違い、父親からの束縛もなくなり、毒が抜け年相応の幼さも感じられるようになっていました。
私との生活を心から望んでいる。私ははじめて真剣に恋愛をしてみようと思いました。
いつみがやって来てからまもなく一週間が経とうとした頃、どこにも出掛けなかったいつみが朝早く支度をして出掛けていきました。
何をすることもない私は、当然のようにいつみを追いました。
途中、花屋に寄ると、たくさんのすずらんの花束を抱えてでてきました。そして、学院にやってきました。もう戻ってくることはないと思っていましたが、当然のように彼女は文学サークルのサロンに向かいました。
私は久しぶりに盗聴器が拾う音声を車から聞きました。再会を喜ぶ小百合といつみ。
二人の計画をここではじめて知りました。
すっかり毒が抜けたと思ったいつみはやはり悪女だったのでしょうか。小百合によって殺され、もう会うことができなくなった今、それを確かめる術はもうありません。
はじめて本当に人を愛することをはじめた私。いつみの小説には驚きましたが、それは昔学院にいたころのいつみです。私と暮らすようになってからのいつみではありません。
私にとって、これからの生きがいになるはずだったいつみを奪った小百合。
私は小百合に復讐することを誓いました。
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つづく
暗黒女子のつづき⑥ わたしの独白 その3(終) 6/6
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